Manchester by the Sea

会社を休み健診の結果を聞きに行く。

名前を呼ばれ診察室へ。

八十歳くらいの医者。

「お前さんどれくらい生きるつもりだ。」

「え。」

「え、じゃない。医師から言えば迷惑なんだよあんたみたいな人は、」

「タバコ吸っていて、デブ。今、50だからあと20年このままで生きられればいいだろうと思っているんだろ。」

「医師はね、そんな人でも助けなければならない義務があるんだよ。」

そこから1時間説教が始まった。

自分が禁煙するのに21年間かかった事。

小学校でタバコについての授業をしている事。

食べ物は過ぎたら栄養でなく、毒だと言う事。

駄目な医者が多いから年々医学部の入試が難しくなってる事。

人生においてのいろいろな話。

「ここまで話せば初診料2150円もらっていいだよ。」

医者の話にここまで感動した事はない。

看護師さんが、

「先生、次の患者さんがおりますので、それくらいで、」

ありがとうございましたと頭を下げ出ようとした時。

「おい、タバコ置いていけ。」

タバコを渡すと付箋紙をはり名前と日付を書く。

「来年、取りに来い。」

「いいか、食い物は一割減らして、タバコはどうせやめられないんだから、一本づつ減らしていけ。」

何か、死んだ親父に説教されているみたいで、

検査結果を改めて見てみると、全て正常値。

体が小さく目は鋭くとも優しい顔の老医師だった。

平日の休みはなかなか無いので、

映画を観にシネコンへ。

Manchester by the Sea

こんなに切なくて美しい映画は見た事がない。

人間とは、家族とは、夫婦とは、

息苦しくて席から立てない。握った拳の力が抜けない。

反比例するマンチェスターの美しい海。

やめたはずの煙草に火をつける。

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