野球狂の詩
秋晴れの今日。サバニには乗らず野球に興じる。
1983年。横浜商業高校は春の甲子園大会準優勝。
最強だった。
33年の時を経て彼等と同じフィールドに立つ。
母校武相とはいつもライバルだった。
久しぶりの張り詰めた緊張感。
一球一球に集中する。50を過ぎてこんな思いをするとは夢にも思わなかった。
ずっとボールを追いかけていた。
魚市場の駐車場、工場脇のグランド、平和島公園の原っぱ、
武相高校の球場。
最終回ツーアウト、サードからの送球。
ファンブルする。
「しまった。」
グラブからこぼれたボールを右手で掴むまでの数秒。
初めてボールを握ってから46年の時間。
グラブの革の匂い。砂煙。
右手でボールを握り、右足をファーストベースに伸ばす。
「アウト!」
優勝。
秋の西日がサングラスに反射する。
「遠く離れてハイスクール、揺れる思い出。」
SASの歌詞が頭に流れる。
「もう、会えないのだろうマイフレンド。」
1983。Y校を倒そうと必死に365日白球を追いかけていたあいつら全員とは、もう会えない。
グラブを磨きながらビールを飲る。
レザーローションの匂い。
グラブを拳で二回叩く。
帰らざる日々の扉をノックする様に。
0コメント