久留和にて。

散歩の途中に野島神社に参る。

鳥居の建立月日が目に入る。

昭和59年。

頭の中のラジカセのスイッチがplayになる。

「予備校の湿っぽい廊下であの娘を見つけた。」

大潮の昨日、三人でサバニを走らせる。

前日の南風から変わっての北風。

速い潮の流れと予報以上の風がサバニを沖へと流す。

「放課後の図書館のロビーで、思い切って声を掛けた。」

枯葉の様に漂うサバニ、エークに全神経を注ぐ。

環八を用賀へ。三年ローンのシビック。

高速手前のデニーズ、サニーサイドアップの目玉焼き。

「春になれば、全て上手く行くさと、別れたよ映画の後。」

尾が島より外側に出ないように舵を切る。

シビックの横をマセラティが過ぎる。

「私、大学出たら商社に勤めたいんだ。」

「かずくんはどうするの?」

「俺は…」

駒沢公園を通り過ぎる。

「今もあの娘長い髪のままかな。」

尾が島周辺のこの時期の透明度は秀逸だ。

大浜に着き、頭の中のラジカセのスイッチがオフになる。

夜、アフターサバニ。

大桟橋のビアフェスでIPAを飲る。

船の汽笛とイルミネーションがあの日の環八と今日の海をシンクロさせる。

「目をこうして閉じれば十九のままさ。」

埠頭に吹く3ノットの風と9%のALCが、

忘れていた髪の薫りを思い出させる。

駒沢公園を通り過ぎる。

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