クジラのフライ

あの日から一年が経った。

お花を沢山サバニに積み、

彼女がいつもビーチコーミングしていた長者ヶ崎へ。

北風が花弁を冬の海に誘う。

静かな何処までも静かな沈黙の海。

遠く大島に積もる雪が霞む。いつまでもみんなの心の中に。

サバニを降り雑踏の中へ。

浜の仲間との集い、円卓を囲み取り留めのない会話。

紹興酒を南京スタイルで飲りながら、

窓越しに行き交う人々を眺める。

酔いも回り雑踏の中へ消えていく。

横浜の道を東へと進む。あてもなくただ風に任せ。

レコード店から懐かしいメロディー。路地の猫の瞳。

「涙で戻れるなら、このまま泣いていたい。」

千春のタイニーメモリー。

暖簾をくぐる。チューハイと鯨のフライ。

ウスターソースが時間をあの日に戻す。

四杯目のチューハイ、頬杖、

暖簾を揺らす3knotの風。

路地の猫。

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